卒業生のインタビューの第一弾として、すぺぃろを経由して現在ピアスタッフとして働かれている五味さん、石井さんをお招きしお話をうかがいました。(聞き手:山本俊爾=すぺぃろ管理者)

 

山本
今日はすぺぃろの卒業生で、現在リカバリーカレッジたちかわの事務局を担われている五味さん、石井さんにお集まりいただき、すぺぃろとの出会いやお使いになられて感じられたことなどに関してお話を伺いたいと思っています。お二人のご体験を教えて頂くことで、これからすぺぃろのご利用を考えていらっしゃる方の参考になればと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
五味さん
よろしくお願いします。

石井さん
なんだか緊張しますね。

【すぺぃろご利用の経緯】

山本
まず最初にお二人のすぺぃろとの出会いについてお尋ねします。どのような経緯ですぺぃろをお使いになることになったのでしょう?

五味さん
以前にもお話ししたかもですが、主治医からは当初退院後就労を目指すなら「作業所」に行きなさいと勧められていました。2年前のことです。不安な事の相談にも担当スタッフがのってくれるという話を聞き、作業所を転々としていました。しかしながら作業所で相談にのってくれるのは作業を円満に進めるためだけという縛りがありました。

山本
確かに。いわゆる作業所、おそらく就労継続B型みたいなところでは、相談イコール作業をする上での相談、みたいなところがありますよね。

五味さん
つばさ(地域活動支援センター)の計画相談の担当職員さんに、「もっと生活上の不安にものってくれる所はありませんか?」と相談していましたが、「就労」と「日常生活上の不安軽減」の両方を一ヶ所では、同時には解消は無理そうだと思うに至りました。なので今後まずは日常生活の改善からとテーマを絞った時に立川で生活訓練の事業所が、しかもまだ開所して間もないので、手厚い支援がと紹介されたのがすぺぃろだったのです。

山本
そうだったのですね。確かにすぺぃろは開設してそれほど経っていない頃でメンバーさんも少なく、通所プログラムも今より少なく、個別支援のほうが目立っていた時期でした。

石井さん
私は開設当初に利用させて頂いた一人だったんです。五味さんとは利用の時期がほとんど重なっていないんですよね。
すぺぃろが立ち上がった2015年頃は私は日野でのWRAPクラスに関わっていて、その場所に山本さんが来てくださったんです。そしたら次の日に連絡が来て、「ぜひすぺぃろに来ませんか?」って。変な勧誘みたいな感じで警戒していたのを覚えています(笑)。

山本
懐かしいですねぇ。石井さんがスケッチブックを活用されたWRAPをされているのは前からfacebookで拝見していて、ひそかなファンだったんです。
すぺぃろはWRAPファシリテーターなどピアスタッフの就労支援を当初は考えていましたから、キャリアの浅いファシリの方に、クラスのできる現場を提供しようとしていて、それでお声をかけさせていただいた経緯がありました。

ちなみにお二人はすぺぃろの何が魅力、ピンときて事業所を選ばれたのですか?


石井さん
WRAPファシリテーターとしての経験を積みたいという気持ちがあって、すぺぃろ内外で様々なチャンスをいただけると伺ったことが大きかったです。また、山本さんはじめ当時のすぺぃろスタッフの方々やすぺぃろという場に自分がそれまで体験した「福祉・支援のにおい」と違うものを感じたことも惹かれるきっかけになりました。。

五味さん
とにかく日常生活を送る上で次々に湧いてくる不安を、誰かに話したかった。「週に2回、一時間位の面談をしてくれる」というお願いに答えてくれたのが、すぺぃろだったという感じです。

山本
いまメンバーさんが40名もいらっしゃるので、今だとなかなか希望に沿えないニーズかも知れませんけど(苦笑)。

【すぺぃろでの活動に関して】

山本
お二人のすぺぃろでの活動についてお尋ねします。まず、どのくらいの期間お使いになられていましたか?という質問から。

五味さん
僕は二年間きっちりと利用させていただきました。

石井さん
私はあんまりはっきり覚えていませんが、利用をはじめてすぐに家の事情で田舎へ引っ越したため、期間としては半年以下だったように思います。
あと去年また上京して働く中で、少しだけまた利用させていただいていました。

山本
主にすぺぃろではどんな活動をされていましたか?

石井さん
とにかくWRAPのことをたくさん考えていた時期でしたね。
実際にファシリテーターとして他の福祉の事業所とかで実習の機会をいただいてクラスをおこない、またそこに山本さんに同行してもらってフィードバックや感想をいただくことで、自分のWRAPファシリテーターとしての礎となるものを築くことができました。

山本
かなり頑張りましたよね、お互いに。クラスやった後でみっちり振り返りして…。なかなか濃密な時期を自分も過ごさせていただきました。

石井さん
きつかったです(笑)。

五味さん
僕は最初の一年間は、週に3日の通所(その内2回は面談)担当スタッフの小川さんとマンツーマンで、湧いてくる不安や心配事の分析や軽減方法を模索していました。
通所二年間を迎えるにあたって、カレッジへの参加・ピアチューターゼミへの参加と少しずつ活動を広げていった感じです。利用開始一年半くらいでピアスタッフでの就労に繋がりました。

山本
ご利用当初に望まれていたような支援や、ご希望する生活は手に入りましたか?またご利用期間中に思い出に残っていることは何でしょう?

石井さん
とても大きかったのは、自分のことを全力で信じてもらう、ということを体感させていただいたことです。それまでの人生でもきっと、自分を信じてくれる人は居たように思うけれど、信じてもらっていることを勇気を出して受けとることは私にとってすごく大変なことでした。人とこころでつながる勇気やよろこびが、すぺぃろでの思い出のどの場面からも思いだされます。

五味さん
すぺぃろの利用開始時の願いは、「不安や心配事の軽減」と「自分自身の自信回復」「長期的にみての就労」だったので、現在はほぼかなっているのかな。思い出に残る事は、色々と有りますが「三鷹のカレッジ講座への参加」と「昨年のリカバリーフォーラムでのお世話になった方との再会」とかですかね。僕はけっこう前に三鷹の巣立ち会でピアスタッフをやっていた時期があって、調子が悪くなってしまってちゃんとお別れも出来ずにフェードアウトしてしまっていたので、自分が元気になってまた再び出会えることができて嬉しかったんです。

【現在のお仕事にかける思いについて】

山本
そんなお二人は今ではリカバリーカレッジたちかわ事務局を担う非常勤スタッフとして勤務されていますね。

石井さん
私はもともとすぺぃろに入る時から、もう数か月後に山形の田舎に帰ることが決まっていました。そして帰ってから、いろんなご縁をいただいて、ピアスタッフとして就労移行型の事業所で働いていました。その中で葛藤や職場との願いの共有や目指すことの違いに悩むようになっていったんですが、山形に行ってからもずっとすぺぃろのスタッフとは繋がっていて、悩みをfacebookのメッセンジャーで聞いてもらったりしていました。そしていよいよもう辞めるかどうか迷うくらいになった時に、山本さんからお誘いをいただいて、上京しこの団体(Parquetグループ)で働くことを決めました。

五味さん
僕はすぺぃろで昨年行われたピアチューター養成ゼミへに参加して、もう一度だけピアスタッフでの就労をしたい、してもいいかなぁと考えるようになったんです。やって調子を崩した経緯もあって、怖い部分もあったんですけど。でも昨年この団体が日野で新しい就労継続B型を始めるって聞いて、チャンスを貰った感じです。結局B型は立ち上がらなかったんですけど、雇用は続いてすぺぃろの支援を受けながら地域活動支援センターで働くことになったんです。

山本
何だか手前味噌な感じになってきていますが(笑)、お二人にとって、このグループの魅力、「働きたい」「働いてもよい」と思えるポイントは何だったんでしょうか?

石井さん
私はカレッジの場や集う人たちが好きで、そこに居られることに感動したりワクワクしたり、喜びを感じています。 時には戸惑ったり、圧倒されたり、悩むことや疲れ果てることもあります。だけど、なぜか、戻ってきたい・ここに居たいと思うのです。また希望を感じるところに立ち返ることができる。そこが大きな魅力です。

五味さん
グループの魅力は、「新たな事への追求力」です。他の事業所や法人が二の足を踏む様な事を実行・実現する「その一員になれる」というのがポイントですかね。

山本
今は主にどんなお仕事を担当されていますか?今のお仕事のやりがいも教えてください

五味さん
現在はリカバリーカレッジたちかわの事務局で働いています。居場所アルテの管理人業も少しですかね。少し前まで学生として利用していたカレッジを裏方として支える事が出来るのがやりがいです。

石井さん
カレッジの事務局・アルテの管理人・WRAPなどの講師をしています。

人のこころに触れられたり包まれたり、ドキドキしたりと、自分のこころと誰かのこころがつながる機会がいっぱいあるのがやりがいや宝物になっています。

【最後に】

山本
最後になります。お二人にとっていま仕事をされる上で、「すぺぃろを通過(卒業)しておいてよかったなぁ」と感じることはなんでしょう?

石井さん
何度も繰り返してしまいますが、信じてもらったこと・信じることでそのことに向き合う勇気を出したことを味わえたことがとても大きいです。

五味さん
すぺぃろの利用開始前と現在では、かなり価値観や考え方が変わりました。
二年間(事実上一年半)あーでもない、こーでもないと色々と考え自分なりに行動出来た事が変化に繋がったと思っています。この時間は過ごせて良かったと思います。

山本
お忙しい中お二人ともありがとうございました。すぺぃろやリカバリーカレッジたちかわでのご経験を生かして、いまそれを支え広げていく立場にいらっしゃるのは心強い限りです。これからもどうぞよろしくお願いします。

 

 

五味大輔さん

 

中学2年の時に、精神的頻尿から鬱症状と不安症が始まる。 通信制高校へ進学するのと 共に自営で古本屋を始めるため修行(?)期間を過ごす。 20才で古本屋を開業した。 この頃から確認癖が強くなり精神科にかかる。徐々に鬱が本格化してくる。 26才で廃業、その後運送業を開業する。 27才から一般の会社勤めに転職、12年間精神科へ通院しながら勤務した。 39才で始めての精神科入院、退院後数カ月で症状の再燃で 再入院する。 病院のケースワーカーの進めで「うつ病のリワーク」事業所に登録、再就職を目指しつつピアサポート活動に参加した。 障害者雇用枠で就職したが、環境の変化の影響や体調を崩し再び入院する。 その後、「うつ病のリワーク」事業所の法人でのピアスタッフでの雇用を提案される。 一年弱の経過観察期間の後、ピアスタッフとして就労した。 その後、また体調を崩し結果入院する。 退院後、作業所や病院デイケアを転々とした。 後に「すぺぃろ」に登録、 利用者として二年間を過ごし 現在は、法人のピアスタッフとしてカレッジ事務局に勤務。

石井まい子さん

10代のころ美術を学んでいたときに、強い生きづらさを感じ精神科ユーザーとなる。 以降10年近く入退院を繰り返しながら病と共に生きる決意を固め、一念発起して入ったデイケアでWRAPに出会う。 リカバリーという概念に惹かれ、数年迷った末WRAPファシリテーターに。